令和8年6月の診療報酬改定で、「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されました。一方で、多くの医療機関が長年算定してきた「医療DX推進体制整備加算」は廃止されています。

「名前が変わっただけ」と考えて従来どおりにしていると、算定できなくなります。届出は自動で引き継がれず、要件も新しくなりました。さらに2026年6月19日の疑義解釈で、「これは算定できない」という落とし穴も明確になっています。

病院のシステム部門・医事部門の現場に12年関わり、現在は医療機関のAI導入を支援している立場から、この加算の要点と算定の落とし穴を整理します。

電子的診療情報連携体制整備加算とは?

令和8年6月1日に新設された、基本診療料の加算です。旧「医療DX推進体制整備加算」を廃止・再編したもので、初診料(A000)・再診料(A001)・外来診療料に月1回加算します。

電子処方箋・電子カルテ・電子カルテ情報共有サービス・サイバーセキュリティ対策・医療機関間の情報連携といった体制を評価する加算です。

点数はいくら?

初診料は3段階(15点・9点・4点)、再診料は一律2点です。

  • 電子的診療情報連携体制整備加算1(初診料 A000 注16):15点
  • 電子的診療情報連携体制整備加算2(初診料 A000 注16):9点
  • 電子的診療情報連携体制整備加算3(初診料 A000 注16):4点
  • 電子的診療情報連携体制整備加算(再診料 A001 注19):2点(区分なし・一律)

出典:令和8年3月5日告示・医科点数表(A000 注16/A001 注19)。なお、本加算を算定した場合、明細書発行体制等加算(注11)は別途算定できません。

旧「医療DX推進体制整備加算」からの自動移行はある?

ありません。すでに届出済みでも、改めて届出が必要です。

「医療DX推進体制整備加算」や関連の届出をしていても、新加算へ自動では引き継がれません。新しい施設基準で改めて地方厚生局へ届け出る必要があります。「以前届け出たから大丈夫」という思い込みが、算定漏れの最も多い原因です。

「チャット機能」での医療機関間の情報共有は算定できる?

算定できません。2026年6月19日の疑義解釈資料(その8)で、専用アプリのチャット機能を利用した情報共有は、施設基準で求める「複数の医療機関間の電子的な情報共有」に該当しないと明確化されました。

つまり、単に「電子的に送れる」だけでは要件を満たしません。電子カルテ情報共有サービスや HL7 FHIR 等の標準規格に準拠したシステムによる情報共有が必要です。

落とし穴:チャットツールでの情報共有は対象外

医療向けチャットツールや一般的なメッセージングアプリでの医療機関間連携は、本加算の「電子的な情報共有」に該当しません(疑義解釈その8)。自院の情報共有手段が標準規格に基づくものか、改めて確認が必要です。

条件を満たせば必ず算定できる?

そうとは限りません。2026年6月時点で、認証対象となる電子カルテ製品の一覧が厚生労働省から公表されていないためです。

マイナ保険証の利用率が高く、電子カルテを導入済みの施設でも、認証要件の関係で届出できないケースが報告されています。電子カルテベンダーに「電子カルテ情報共有サービスへの対応状況」を確認したうえで届け出るのが安全です。

算定可否は「断言できない」のが現状
初診15点・再診2点と点数は明確ですが、認証電子カルテ一覧の未公表・チャット不可の疑義解釈など、算定可否には個別の確認が必要です。「点数表に載っている=すぐ算定できる」ではない加算です。

算定可否を正しく判定するには

この加算は、点数自体はシンプルでも「届出の要否」「情報共有手段の適合」「認証電子カルテの確認」と、判定すべき条件が複数あり、疑義解釈によって随時更新されます。

弊社(株式会社giverth)では、こうした施設基準を自院で確認できる施設基準自主点検AIを提供しています。「チャットでの情報共有は対象外」といった最新の疑義解釈を反映し、自院の運用が要件を満たしているかを確認できます。診療報酬は年単位で改定されるため、一度作って終わりではなく、改定や疑義解釈のたびに判定基準を更新し続ける設計にしているのが特徴です。

まとめ

電子的診療情報連携体制整備加算(令和8年6月新設)の要点は、次の4つです。

  • 旧「医療DX推進体制整備加算」は廃止。届出は自動移行されず、改めて届出が必要
  • 点数は初診3段階(15点・9点・4点)、再診一律2点。明細書発行体制等加算とは併算定不可
  • チャット機能での医療機関間の情報共有は算定対象外(疑義解釈その8)
  • 認証電子カルテ一覧が未公表のため、条件を満たしていても届出できないケースがある

「名前が変わっただけ」と放置せず、届出の要否と情報共有手段を改めて確認することが、算定漏れと返戻を防ぐ第一歩です。制度と現場の両方を見てきた経験から、こうした「見落とされやすい新加算」こそAIで定期点検する価値が大きいと考えています。

沼尻 義弘 — 株式会社giverth 代表取締役
沼尻 義弘
株式会社giverth 代表取締役 / ITコンサルタント・PM

病院勤務12年(医事課・システム担当)の現場経験を持つITコンサルタント。医療機関・中小企業向けの完全オフラインAI導入支援(Dify + Ollama)に特化。

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