令和8年6月の診療報酬改定で、生活習慣病管理料が「(Ⅰ)」と「(Ⅱ)」に分かれ、それぞれ包括する範囲が大きく変わりました。脂質異常症・高血圧症・糖尿病といった、外来で最も多くみる疾患に直結する区分です。

「これまでどおり算定すればいい」と従来のロジックを流用すると、本来は別に算定できる検査を包括してしまったり、逆に包括すべき項目を別に算定して返戻になったりします。(Ⅰ)と(Ⅱ)で「何が包括され、何が別に算定できるか」がそもそも違うためです。

病院のシステム部門・医事部門の現場に12年関わり、現在は医療機関の診療報酬チェックAI・施設基準自主点検AIの導入を支援している立場から、(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いと、見落とされやすい充実管理加算の落とし穴を整理します。

生活習慣病管理料とは?対象と基本要件

生活習慣病管理料は、脂質異常症・高血圧症・糖尿病のいずれかを主病とする患者に対して、療養計画に基づく総合的な治療管理を評価する管理料です。算定できる医療機関の基本要件は(Ⅰ)・(Ⅱ)で共通しています。

  • 脂質異常症・高血圧症・糖尿病のいずれかが主病であること
  • 許可病床数200床未満の病院および診療所であること
  • 初診料を算定した日の属する月は算定不可

「外来でよく出すから」と初診月に算定したり、200床以上の病院で算定したりするのは要件外です。まずこの3つが前提になります。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の最大の違いは「包括範囲」

(Ⅰ)は検査・注射・病理診断まで所定点数に含まれ、別に算定できません。(Ⅱ)は検査・注射・病理診断を別に算定できます。ここが両者を分ける最も大きなポイントです。

項目生活習慣病管理料(Ⅰ)生活習慣病管理料(Ⅱ)
第1部 医学管理等5項目を除き包括37項目を除き包括
第3部 検査包括(別算定不可)別算定可
第6部 注射包括(別算定不可)別算定可
第13部 病理診断包括(別算定不可)別算定可
外来管理加算(A001 注8)包括(別算定不可)包括(別算定不可)

つまり、同じ「生活習慣病管理料」でも、(Ⅰ)を算定した日は生活習慣病に対する検査・注射・病理診断を別に算定できません。一方(Ⅱ)ではこれらを別に算定できます。レセコンの設定や算定ロジックを(Ⅰ)・(Ⅱ)で取り違えると、過剰算定(返戻)または算定漏れの双方が起こり得ます。

同月別日でも包括は続く

生活習慣病のための診療については、同じ月の別の日であっても、(Ⅰ)では第1部医学管理等(5項目除く)・第3部検査・第6部注射・第13部病理診断は別に算定できません。(Ⅱ)でも第1部医学管理等(37項目除く)は同月別日でも算定不可です。「日を分ければ算定できる」という運用は成り立ちません。

別に算定できる「医学管理等」は(Ⅰ)が5項目、(Ⅱ)が37項目

第1部医学管理等は原則として包括されますが、例外的に別算定できる項目があります。その数が(Ⅰ)は5項目、(Ⅱ)は37項目と大きく異なります。

(Ⅰ)で別に算定できる医学管理等(5項目)

  • B001「20」糖尿病合併症管理料
  • B001「22」がん性疼痛緩和指導管理料
  • B001「24」外来緩和ケア管理料
  • B001「27」糖尿病透析予防指導管理料
  • B001「37」慢性腎臓病透析予防指導管理料

(Ⅱ)で別に算定できる医学管理等(37項目)

(Ⅱ)では上記に加え、特定薬剤治療管理料・外来栄養食事指導料・がん患者指導管理料・診療情報提供料(Ⅰ)(Ⅱ)・連携強化診療情報提供料・薬剤情報提供料など、合計37項目が別算定の対象です。糖尿病・腎臓・がん・連携系の管理料が幅広く含まれるため、(Ⅱ)を算定する施設では「37項目に該当するか」の判定が日常的に発生します。

落とし穴:除外項目リストの取り違え
(Ⅰ)の5項目リストと(Ⅱ)の37項目リストを混同すると、別算定の可否を誤ります。特に(Ⅰ)で37項目の感覚のまま算定すると過剰算定になりかねません。算定する区分が(Ⅰ)か(Ⅱ)かを明確にしたうえで、対応する除外リストで判定する必要があります。

充実管理加算は「2段階施行」——加算3が先、加算1・2は2027年4月から

令和8年改定で新設された充実管理加算(注4)は、施行時期が2段階に分かれています。ここを見落とすと、まだ算定できない加算を算定してしまう原因になります。

加算点数算定開始日施設基準の届出
充実管理加算310点2026年6月1日〜届出不要(旧届出から自動移行)
充実管理加算220点2027年4月1日〜要届出
充実管理加算130点2027年4月1日〜要届出

2026年6月〜2027年3月の期間に算定できるのは、充実管理加算3(10点)のみです。充実管理加算1・2は令和9年(2027年)4月1日から有効になります。

加算3は「自動移行」、加算1・2は実績データの提出が前提
令和8年5月31日時点で旧・生活習慣病管理料の注4の施設基準を届出済みの施設は、充実管理加算3へ自動移行されます(新規届出は不要)。一方、充実管理加算1・2を取るには、外来医療等調査に参加し、調査に準拠したデータを継続提出するなどの実績要件を満たし、改めて届け出る必要があります。加算1は届出機関全体の上位20%、加算2は上位50%という実績値要件もあり、ハードルが上がります。

なお、生活習慣病管理料には充実管理加算のほか、血糖自己測定指導加算(注3)、眼科医療機関連携強化加算(注5)、歯科医療機関連携強化加算(注6)などの加算もあります。眼科・歯科連携加算は、紹介して終わりではなく「次回診療時に受診状況を確認し診療録に記載する」ことが算定要件です。

血液検査は「6か月に1回」が原則

生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)に共通して、原則として少なくとも6か月に1回以上の血液検査等を行うことが求められます。

他の医療機関で実施した血液検査等の結果を参照できる場合などは例外として認められますが、その場合も検査結果を診療録に記録する必要があります。「前回の検査からいつの間にか6か月以上空いていた」という状態は、算定の前提を欠くことになります。

なぜ「算定の可否」をAIで点検する価値があるのか

ここまで見たとおり、生活習慣病管理料は「(Ⅰ)か(Ⅱ)か」「包括か別算定か」「除外リストの5項目か37項目か」「充実管理加算はどの段階か」「血液検査は6か月以内か」と、判定すべき条件が何層にも重なります。さらに充実管理加算1・2のように、年単位で施行時期や施設基準が変わる項目もあります。

弊社(株式会社giverth)では、こうした算定可否・施設基準を自院で確認できる診療報酬チェックAI・施設基準自主点検AIを提供しています。患者データを外部に出さない完全オフライン構成(Dify + Ollama)で動かせるため、レセプト情報を扱う医療機関でも導入しやすいのが特徴です。診療報酬は年単位で改定されるため、一度作って終わりではなく、改定や疑義解釈のたびに判定ロジックを更新し、毎月自動テストで精度を検証し続ける設計にしています。

まとめ

令和8年改定の生活習慣病管理料、押さえるべき要点は次の5つです。

  • (Ⅰ)と(Ⅱ)の最大の違いは包括範囲。(Ⅰ)は検査・注射・病理まで包括、(Ⅱ)は別算定可
  • 別に算定できる医学管理等は(Ⅰ)が5項目、(Ⅱ)が37項目。リストの取り違えに注意
  • 充実管理加算は2段階施行。加算3(10点)は2026年6月から、加算1・2(30/20点)は2027年4月から
  • 充実管理加算3は旧届出から自動移行。加算1・2は実績データ提出と上位20%/50%の実績要件が前提
  • 血液検査は原則6か月に1回。他院結果を参照する場合も診療録への記録が必要

対象患者が多い管理料だからこそ、(Ⅰ)・(Ⅱ)の取り違えや充実管理加算の施行時期の見落としは、件数が積み上がると影響も大きくなります。制度と現場の両方を見てきた経験から、こうした「条件が多層になる管理料」こそAIで定期点検する価値が大きいと考えています。

沼尻 義弘 — 株式会社giverth 代表取締役
沼尻 義弘
株式会社giverth 代表取締役 / ITコンサルタント・PM

病院勤務12年(医事課・システム担当)の現場経験を持つITコンサルタント。医療機関・中小企業向けの完全オフラインAI導入支援(Dify + Ollama)に特化。

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