令和8年6月の診療報酬改定で「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されました。
旧「医療DX推進体制整備加算」「診療録管理体制加算」の後継に当たるこの加算、重要なポイントが一つあります。
旧届出からの自動移行はありません。
届出が済んでいる施設でも、改めて新たな届出が必要です。さらに施設基準の維持確認項目が増えており、疑義解釈(その8・2026年6月19日)で細かい落とし穴も明確化されました。
医療機関が「施設基準を満たしているか」を手軽に自主点検できるAIが必要と判断し、作ることにしました。
「8時間で完成」の内訳
完成日は2026年6月18日。着手から完成まで約8時間でした。
人間が一人でやると数日かかる作業量です。なぜ8時間で終わったか。
Claude Code(AIエージェント)が設計からデバッグまでを主導したからです。
私がやったのは:
- 「どんなAIを作りたいか」を説明する
- Difyの操作(UIはAIが直接操作できない)
- 最終的な動作確認
Claude Codeがやったのは:
- ナレッジベースの構成設計
- SYSTEMプロンプトの設計と修正
- 発生したバグの原因特定と解決策の提示
- Dify Lexicalエディターを直接操作するJavaScriptコードの生成
実装中に4つのバグが発生しましたが、すべてClaude Codeが自力で原因を特定し、解決しています。
4つのバグと解決の記録
バグ①:ナレッジベースが全くヒットしない
チェックリストを聞いても全く関係ない回答が返ってきました。
原因: ナレッジ検索設定「トップK=2」で上位2チャンクしか取得せず、チェックリストが入ったChunk-06が除外されていました。
解決: トップKを2→6に変更。
バグ②:チェックリストのチャンクがスコア圏外
原因: Chunk-06の要約フィールドにタイトルのみで加算名が含まれていなかったため、ベクトル類似度スコアが0.65未満で圏外に。
解決: 要約フィールドに加算名を追記 → スコアが0.82(1位)に改善。RAGはナレッジの「タイトル設計」が精度に直結します。
バグ③:ナレッジ検索結果がLLMに渡らない(最重要)
Dify UIに「コンテキスト利用時はプロンプトに変数を明記してください」という警告が。
原因: SYSTEMプロンプトに {{#context#}} という変数が含まれていなかった。
解決: {{#context#}} を追加。初見では見落としやすいバグです。
バグ④:LLMが「情報がない」と返し続ける
{{#context#}}を追加しても毎回「情報はありません」と回答。コンテキストはLLMに届いていました。
原因: SYSTEMプロンプトが250文字と長く、「情報がない場合は〜と返す」というフォールバック条件を3bモデルが情報がある場合にも誤って発動させていました。
解決: SYSTEMプロンプトを250文字→45文字に大幅簡略化。条件分岐・フォールバックルールを全削除。
日本語のみで回答してください。
{{#context#}}
上の□項目を全て出力してください。
3bの小型モデルには、指示は1文・条件分岐ゼロが鉄則でした。
完成した施設基準自主点検AI
4つのバグを全て潰した結果、動作確認は全項目クリア。
- チェックリスト7項目の出力
- 日本語のみ(中国語混入なし)
- 引用元ファイル表示
- giverth.co.jp/demo での動作
さらに、完成翌日(6月19日)に厚労省から「疑義解釈その8」が発出。その日のうちにナレッジベースを更新して対応済みです。
Claude Codeと作って気づいたこと
「8時間」の中身は、ほぼデバッグでした。
設計自体はシンプルです。ナレッジ検索→LLM→回答という3ノード構成。でも実際に動かすと、RAGは設定の細部でつまずきます。
- ナレッジベースのトップK設定
- チャンクの要約フィールド設計
{{#context#}}の位置- 3bモデルへのプロンプト設計
これらは「知っていれば5分で直せるが、知らなければ1日かかる」種類の問題です。Claude Codeはこれを全部知っていました。
人間が「なんかおかしい」と感じた時点で相談し、ログを共有すれば、Claude Codeが原因を絞り込んで解決策を提示する。このサイクルが高速で回ったことが「8時間」を実現した理由です。
ご相談ください
施設基準の自主点検AIは現在、giverth.co.jp/demo で公開中です。
「うちの施設でもこういうAIを作りたい」「施設基準の確認業務を効率化したい」——そうしたご相談は、お気軽にどうぞ。
病院でシステム・医事を12年担当した経験と、Claude Code・Difyを使った実装の両面から、あなたの施設に合った設計をご提案します。